「大統領暗殺」 監督 ガブリエル・レンジ

abyssal-fish2007-11-15

・ちょっとなー、これじゃ物足りないなあ。大統領が暗殺されるあたりまでは面白かった。アメリカ大統領が暗殺されることで、その後世界がどう変わっていくかを見せてくれるのかと期待してしまったのだけど、映画の焦点は誰が犯人だったのか、犯人はどんな人物なのかに絞られていく。
・にもかかわらず、特に犯人像が新鮮というわけでもない。
・犯人には多少のドラマが描かれる。でもそういうフィクションを描きたいのなら、わざわざブッシュ大統領という実在の人物を使う必要もなかったろう。擬似ドキュメンタリーという形式もドラマを盛り上げる役目を果たしているように見えない。
・真犯人なんかどうでもいいから「チェイニー大統領の世界」を、もっと具体的に、もっと先まで想像してほしかった。
・いったい何を描きたかったのか良く分からない。

「スターダスト」 監督 マシュー・ヴォーン

Stardust
・人が星を見るように星も人の行動を見ているというのが、比喩的な表現なのかと思ったらどうもそのままの意味らしかったり、宇宙人の話なのかと思っていたらファンタジーだったり、主人公っぽい男が出てきたなと思ったらすっと時間をすっ飛ばして実はその子供が主人公だったりする。もしかして、「レイヤー・ケーキ」の監督とファンタジーの組み合わせは意外な怪作を作り上げたのかと思って、どこに連れて行ってくれるんだろうと序盤ではかなり期待した。
・けど、その後はテンポは良くて面白いんだけど、そういう裏切りはあまりなかった。
・子供の時に見てたらすごいはまってたかもなあ。残念ながらファンタジーというだけでドキドキできる年頃ではなくなってしまった。
・混合玉石ではあるけど細部には光る素材がごろごろ転がっていたので、もうちょっとあくが強くてわけの分からなくて子供の事なんか顧みない映画に仕上げてくれてたら相当楽しめたと思う。ここからそういう路線は難しいか。せめて普通にカタルシスが機能する物語のレールにあの細部が乗っかってればなあ。いや、この映画ののらりくらりとした感じもまあ嫌いじゃないので、逆に中途半端に正当なレールに乗ろうとしなければいいのにな。幽霊兄弟たちには笑えた。

「宇宙から来たティーンエイジャー」 監督 トム・グレーフ

Teenagers From Outer Space [VHS] [Import]
・ゲーム「デストロイ オール ヒューマンズ! 」になぜか丸々収録されていた映画。
・つまらなくはないんだけど、うーん、あまり感じるところがない。
・特撮は嫌いじゃないし、コマ撮りの特撮はむしろ大好きなんだけど、どうも興味を持てないタイプの特撮がある。
・例えば「エド・ウッド」という映画は好きなんだけど、それでもエド・ウッドの映画は観てみようと気が起きない。「ゴジラ」や「ガメラ」は未だに1本もまともに観たことがない(アメリカ版は観たけど)。食わず嫌いなのか?

「デストロイ オール ヒューマンズ! 」

デストロイ オール ヒューマンズ!
・UFOで上空から街を破壊するのは爽快。
・なかなか面白かったけど、似たようなミッションが多くて後半ちょっと飽きてきたかな。
・俺が元ネタを知らないパロディがいろいろ含まれているらしい。でも知らなくても十分面白かった。
ウルトラマンのパロディだったりガンダムのパロディだったり、完全に日本に特化してオリジナルとは違う内容になっているらしいけど、こういうのもありだな。

「ファーレンハイト」

Fahrenheit ファーレンハイト
・解かないと先に進めないような謎解きはこのゲームの中にない。たぶん全ての会話を無視しても、話が分からないだけでエンディングには到達するのだろう。そういう意味ではストーリーを楽しむゲームだったのかもしれない。
・で、俺はそういうタイプのゲームは好きじゃない。謎を解かないと先に進めないようなゲームは意外と少ないよな。俺のゲーム選びが下手なだけなのか。
・途中「テンペスト」とか「ツァラトゥストラはかく語りき」とか本の題名が出てくるんだけど、その中身を知らないと解けないようなゲームはないのかな。
・なんだかんだ言って最後までやったし、つまらないわけではなかったと思うんだけど。

「ラカン」 フィリップ・ヒル 著

ラカン (ちくま学芸文庫)
・一応入門書らしいのだけど、意味ありげな言葉が説明なしに出てきたりして、ちょっと付いていけない部分があった。
・難しいのは、流動性を持った意味と言葉でそれ自体を説明しようとしたり、矛盾を論理的に説明しようとしたり、単独では存在せず関係性の中で始めて立ち現れるものについて説明しようとしているため……なのかな?
・「人生とはすなわち病であり、ならばその治療は死である。」
1フレーズだけ抜き出して名言のように扱うといろいろなものが抜け落ちてしまうので抵抗はあるのだけど、このフレーズには痺れた。
・問題(のように見えるもの)を直せば良い、という単純な論理に普段簡単に陥るけど、問題(のように見えるもの)は実は別の問題の解決法だったというのは日常的とまでは行かなくてもたまに遭遇する状況だ。しかし、人の心もそういうもののなのか……
・面白いなと思うのは、無意識というやつもそうやってシステマチックに動いているらしいということだ。なぜもっとめちゃくちゃにならないんだろう。

「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」 総監督 庵野秀明 監督 摩砂雪/鶴巻和哉

ASIN:B000KN99NG
・比較できるほど前の作品を覚えていないのだけど、相当手の込んだ絵になっている。話はほとんど同じみたいだけど、やっぱり作り直しただけあって、同じシーンでもほとんど書き直しているように見える。
・きっと細部にはさまざまな意味や出典があるのだろうけど、そういう部分は物知りな人に任せてなぜこのアニメに惹きつけられるのかを考えてみると、結局シンジの性格が自分と似ているからだ。細部の意匠のためじゃない。
・本当はやりたくてもやりたくない振りをして、他人に背中を押してもらえるように仕向けて「言われたからやる」という体を装い、自分の意思を隠す。あるいはやりたくないことであっても、自分の意思よりも他人の意思を優先することで自分の意思を隠す。
・これは過剰に「責任」を怖がっているせいだろうか。
・人に指摘されたくないところをぐさぐさと指摘されているようで、第三者的に見ていられない。それで、くどいぐらいの過剰なドラマと演出も気にならなくなってしまう。
・そういう意味でとても日本的な感じがする。ハリウッドで実写化という噂はずっとあるけど、まず無理じゃないかと思う。もし実現したらたぶん器だけ同じで中身の違う映画になるだろう。これに限らないか。
・もうひとつ、このアニメ独特(と言ってもアニメはあまり見てないので俺が見てきた映画と比べて独特という意味だ)なのは、体液感というか内蔵感というか、あえて言えばクローネンバーグ的というか、ぬめぬめした生物の感触だ。
・血の味と精液の臭いが頭の中で甦る。
・今書いてきたことは旧作の感想でもあるのだけど、今回観ていても感じたという事で。
・映画には関係ないけど、エンドクレジットを見ていて宇多田ヒカルの曲「Beautiful World」の作曲が宇多田ヒカル本人だと初めて知った。今まで作曲は別の人なのかと思い込んでいたのだけど、今調べてみると過去の曲も本人が作曲してたんだ。すげー。