「ららら科學の子」 矢作俊彦 著

ららら科學の子
ハードボイルド作家だと思っていたら、いつの間にか文学の人になっている様子の矢作俊彦。この小説も裏稼業が出てきてミステリー小説の展開が起こるのかなと思いきや、ミステリーの事件らしい事件は起こらず現代東京見聞録といった感じで終わる。
1960年代後半、全共闘時代を知っている人には感慨深いのかもしれない。いや、知ってる知らないの問題ではないのかもしれないけど、俺にはこの本が抱えている問題意識がなんなのかがよく分からなかった。
主人公は、他人から見たら騙されて30年も棒に振った男だ。ただ、本人はそう感じていない。30年後の東京を見て、悔しさも感傷も沸き上がってこない。そのギャップを探る旅がここに描かれているのだと思うんだけど、いまいちぴんと来ない。
主人公は、テレビ版「鉄腕アトム」の最終話を気に入っていない。地球を守るために自分の命を犠牲にするアトム。主人公が感情移入しているのは、一人の命を救うために法を犯し海を越えるアトムだ。
集合体や時代の雰囲気への違和感?