「ワールド・トレード・センター」 監督 オリヴァー・ストーン

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なかなか考える事があって興味深い映画だった。
確かに9.11のテロ事件を描いているんだけど、あの事件の固有性はかなり薄い。「ユナイテッド93」は最後まで疑似ドキュメンタリーを貫いたけど、これは個人のドラマに寄りすぎてしまってフィクションと同じように見ることが出来てしまう。そんなドラマを、わざわざ実際の出来事を題材にして描く必要があったのか、と考えることもできる。おそらく、完全なフィクションとして、全く別の出来事として、ほとんど同じドラマが撮れたんじゃないか。
と、切り捨てたい気もするんだけど、じゃあ、あの事件に巻き込まれた個々人に注目した上で固有の出来事として描くとしたらどうやるんだ?と聞かれると答えに詰まる。
気になったのは、随所に滲ませた宗教性だ。あれの意味がよく分からなかった。そこが気になってしまって過大評価しているかもしれないけど、実は追悼の仮面の裏で、まぎれもなく歴史に残る大事件も遺族も踏み台にして、オリバー・ストーンが個人的に抱いている何かを描こうとしているのならその心意気は買いたい。ただ、果たしてそんなものがあったのかどうかはよく分からない。そうだったら面白いという俺のただの希望的解釈のような気もする。