「百年恋歌」 監督 侯孝賢

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どうにも感想が書きにくい。この映画は「恋愛の夢」、「自由の夢」、「青春の夢」の3部からなる。3部は同じ監督による別の映画といった感じで、ある面では似ているけど、ある面では感触が異なる。主役の男女は3編を通じて同じ俳優が演じている。「恋愛の夢」の舞台は1966年だ。音楽はアメリカのオールディーズが使われている。シンプルで端正で心地よい。映画全編でこのトーンが貫かれていれば、その心地よさに絞っていろいろ考えることがあるのだけど、どうもこの映画はそんな単純なものではないようだ。「自由の夢」の舞台は1911年だ。人の声は省かれ、昔のサイレント映画のように台詞は全て字幕で見せられる。音楽はよく分からないけど伝統音楽っぽい感じだ。「青春の夢」の舞台は2005年。クラブ、けだるいロック、同性愛、ネオン、死の影、体の傷といったものが、それまでの穏やかさや安定感を都市の猥雑さで染めていく。
細部に注目して書こうとすると3本の別々の映画の感想になってしまう。この映画について描きにくいのは、3つそれぞれの感想を無自覚に1本の映画の感想としてまとめようとしてしまうからかもしれない。
しかし、実際これは1本の映画として作られている。そして何かが響きあっている。たぶん3編の違いではなく、その互いに響きあう部分に注目したほうがいいのだろうけど、頭の中でまとまらない。


3編の順番には意味はあるんだろうか。なぜ年代順じゃないんだろう。
wikipediaの分類に従うと、この3つは「日本統治時代」「台湾国民政府統治時代」「台湾総統選挙時代」に分けられる。きれいに3つの時代にまたがった事は偶然ではないように思えるけど、それについて考えられるほど台湾について知らない。1911年編に日本の地名が出てきているのに、映画を見ている時には日本が統治していた時代だとは気がつかなかったし、下関が台湾の歴史上重要な土地であったことはさっき調べて知った。1911年編の最後には「三ヶ月後、辛亥革命」と字幕が出るが、それがこの映画のストーリーにどう影響しているのかに至ってはまだよく分かってない。
うーん、どうなんだろう、この映画を理解するためには、そんなに社会背景を気にする必要もないんだろうか。
台湾の歴史 - Wikipedia