「世界共和国へ」 柄谷行人 著

世界共和国へ―資本=ネーション=国家を超えて (岩波新書)

世界共和国へ―資本=ネーション=国家を超えて (岩波新書)

うーん、なんかすごい本を読んだような気がする。ただ、やはり俺の知識が付いていかない。資本主義と言われるとなんか単に金をやりとりしている漠然としたイメージしか湧かないし、帝国というとまずスターウォーズを連想してしまう。まあ、それは大袈裟としても、あいまいにしか分かってなかったという事を改めて思い知った。


初めのうちは、曖昧なイメージでなんとなく読んでいける。けど、あるところで意味の分からない文章に出会い、突然分かっていなかった事に気付く。例えばこんな文章。

どのような国民国家も、国民国家でありつつ「帝国」であろうとすれば帝国主義に陥るほかはないのです。

国民国家を「ほぼ国」と頭の中で自動的に置き換えて曖昧に解釈していると、こんな文章が出て来た時に意味が通じなくなる。国、国民国家、帝国、帝国主義の違いが分からなければこの文章の意味は分からない(ということで俺はいまだに分からない)。


漠然としたイメージは持ってるけど、具体的に分かってない言葉がこの本は色々出てくる。すこしそのへんを確認してみよう。


帝国
帝国 - Wikipedia

帝国主義
帝国主義 - Wikipedia

改めて言われればこの二つはだいぶ違うよな。帝国は皇帝なり強大な王が支配している国。帝国主義は、他の民族や国家を積極的に侵略して領土を拡大していく政策。なぜそれが「帝国」主義と呼ばれるのか。


国民国家
国民国家 - Wikipedia
国民国家の英語がnation-stateなのか。知らなかったよ。この本の中にはわざわざカタカナで「ネーション=ステート」という言葉が出てくる。何か少し特殊な意味合いを持たせているようだ。nationは「国」のイメージが強かったし、stateは「州」のイメージが強かったけど、ここではそういう意味じゃないんだな。ウィキペディアの説明はこんな感じだ。

国民国家(こくみんこっか、Nation-State)とは、領域内の全住民を国民という単位に纏め上げて成立した国家そのもの、あるいはその概念、イデオロギーを指す。近代国家の一つとされることもある。

意味が分かりません。素直に読めば、近代国家以前は住民は国民じゃなかったという事だよな?国民じゃないってどういう事なんだろう。役所みたいなところで管理してないって事かな?


国民
国民 - Wikipedia
漠然とは分かるんだけど……。結局まとまりって事みたいだけど、だったらやっぱり昔から国民はいたんじゃないかという気がしてくるけど、やっぱり違うのか?

本の方ではこんな文章がある。

たとえば、生きている者は子孫の事を考えて行動し、また、子孫は彼らのために配慮してくれた先祖に感謝する。

したがって、「国民」とは、現にいる者たちだけでなく、過去と未来の成員を含むものなのです。

なるほどねえ。以前「イーオン・フラックス」について書いた時、人類滅亡が怖いと書いた。その怖さを埋めてくれるものが、昔は宗教であり農業共同体であり、この本ではネーションという事になるんだろうか。


封建制
封建制 - Wikipedia
この言葉は社会の授業で良く聞いたけど、結局なんなのかよく分からないままだ。土地を媒介とした主従関係って事なのか?


社会主義
社会主義 - Wikipedia
共産主義
共産主義 - Wikipedia
社会主義共産主義の違いもよく分からない。社会主義が発展すると共産主義だったのか。それも知らなかった。


この本全体の感想というのは書けそうもない。とりあえず思い付いた瑣末的なことを書いていく。

労働者は彼ら自身が作ったものを買い戻すと言っていいのです。

なるほどねえ。自分が作ったものを別の労働者が買って自分が金を得る。その金で別の労働者が作ったものを買う。それらが回り回ってまた自分のところに戻ってくる。「金は天下の回りもの」とは言うけど、こういう表現をされるとまたちょっとニュアンスが違ってくる。
回りものとは言っても、回すためにはエネルギーがいる。勝手には回ってくれない。そのために剰余価値を作り続けなければいけないのか。なるほどなあ。
資本を出しているのは誰か。株主はだれか。結局労働者じゃないのか。個人投資家かもしれないし、投資会社かもしれないが、投資会社は個人や会社から集めた金で運用している。会社同士で持ち合っている場合も、含めて結局会社の金は株主の金と考えると、誰が資本家で誰が労働者なんだか分からなくなる。
今の世の中で、資本家って結局金持ちの一側面であり、労働者の一側面でもあるのか?

我々に可能なのは、各国で軍事的主権を徐々に国際連合に譲渡するように働きかけ、それによって国際連合を教化・再編成するということです。

おお、なつかしい。「沈黙の艦隊」じゃないか。あの漫画はたしか90年代前半ぐらいの漫画だったと思うんだけど、そのころからこういう軍事力を国から切り離すという考え方は一般的だったのかな。俺はてっきり漫画だけの話かと思っていた。


それにしてもすごいなと思ったのは、経済も宗教の教義も国家についても、こんな風に説明がつけてしまうことができるんだという事だ。それらは別々のものではなかったんだ。
でも、最終的にこの人が言おうとしているアソシエーションが具体的にどんなものなのか掴めなかった。後書きには、普通の読者が読んで理解できるようなものにしたいと書かれているが、俺はもうちょっと勉強が必要だな。