「小さな恋のメロディ」 - 現実からの離陸

小さな恋のメロディ [DVD]

小さな恋のメロディ [DVD]

監督 ワリス・フセイン


30年前の映画だけど、とても新鮮に見える。子供が美化されすぎているように感じる瞬間もあるけど、それがあまり鼻に付かない。たぶん、ストーリーを見せるのではなく断片的なエピソードを積み重ねて見せる、この映画のスタイルによるものだろう。現実の日常風景でありながらどこか現実味のない子供の世界に引き込まれる。
少女のスカートから伸びる脚の妖しさ。これがまた現実味を希薄にする。最近少女が出てくるものを続けてみてるからそう感じるのかなあ。でもこの映画の場合、その辺は狙って撮っているように見える。
現実からの浮遊は後半に入り加速していく。ラストのドタバタはほとんどコメディだ。でも、そのコメディ風景は、ここまで描かれてきた子供の世界の延長線上にある。
先生や親たちを振り切り、2人はトロッコに乗って逃げていく。現実的に考えれば、その後、大人達から逃げ続けることは出来ないことは目に見えている。だけど、そういう想像はあまり意味を持たない。エンディングの先を想像してしまう事は、もはや御伽噺と化したこの映画の世界を現実に引き戻してしまう。現実から離陸する事に成功した世界の未来を想像してはいけないのだ。ハッピーエンドとはそういうものだと思う。