「アリス」 - ぎこちなく動き出す物体の異様さ

ヤン・シュヴァンクマイエル アリス [DVD]

ヤン・シュヴァンクマイエル アリス [DVD]

久々に観たヤン・シュヴァンクマイエル。久々に甦ってくるこの感触。最近のクレイアニメやCGによるアニメーションは滑らか過ぎて物足りない。俺が惹かれるのはこの映画のようにぎこちなく動き出す物体だ。これはノスタルジーなのか?昔見たアニメが今のように滑らかじゃないから、今でもそういう映像が特別な感情を呼び起こすのか?
もしかしたらそういう部分もあるかもしれないけど、それだけじゃないような気がする。このストップモーションのアニメーションにあってCGに足りないのは、命を持たないはずの「物体」が意志を持ち始める不気味さだ。
コープスブライド」でも「ウォレスとグルミット」でもそうだけど、あまりにきれいに動きすぎると、動いている事が自然な事のように見えてくる。映像の中で動いている人形達が人形だということを忘れ、命を持つ物として見えてきてしまう。
それに対して、ぎこちなさを感じさせる映像は、動かないはずの「物体」の感触を保ち続け、動くことの異様さを放ち続ける。この物体達は意思の疎通を拒む。
この映画では、それらをさらに少女と刃物の微かな背徳が彩る。
とか書きながら、「ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!」は最高に面白かった。近いうちにここに書くつもりけど、その時にはまた今日と矛盾したことを書くかもしれない。