「Mr.&Mrs. スミス」 監督 ダグ・リーマン

アクション映画だと思って見ていると、なかなか本題には入らず、お互いに隠し事を持った夫婦が描かれる。徐々にその2人が殺し屋だかスパイだかのような仕事をしているらしいということが(見る前から知っていることではあるけど)見えてくる。この焦らしはコメディとして結構いいかもと期待する。
結論から言うと、なかなか面白かったものの、コメディとしてはアクションが多過ぎたように感じた。本当はアクションメインで見るのが正しいのかもしれないけど。


これを見ながら、ジェームズ・キャメロンの「トゥルー・ライズ」(asin:B0000UN4A8)を思い出した。これもかなり昔に一度見たきりなので、かなり曖昧な記憶しか残っていないが、途中まではコメディとして結構面白かった印象が残っている。主人公のスパイが、大規模な設備と組織を使って敵国調査を行うように奥さんの浮気を監視するのだが、冗談にこれだけ金をかけられるアメリカ映画ってスゲーと思った。後半はちょっと普通のアクション映画になってしまってがっかりした覚えがある。


Mr.&Mrs. スミス」も少し似たところがある。超絶な機器やテクニックを持った殺し屋だかスパイだかと、普通の一般生活の対比が面白い。俺としては、それをメインに持ってきたコメディ映画が見たかったけど、特に後半、普通のアクション映画になってしまった。


コメディ部分もどこか歯がゆさがある。この感じはなかなか説明しづらい。例えば、映画は2人がカウンセリングを受けているシーンから始まる。倦怠感を感じているが、全うにうまくそれらをごまかしながら過ごしている夫婦のようだ。2人が殺し屋である事を事前に知ってしまっていると、そのギャップがおかしいんだけど、なんというか、そのシーンは見ていて「思わず」笑ってしまう、という感じじゃない。「このシーンと2人の職業とはギャップがあるんだ、だからおかしいんだ、おかしいはずだ」とワンクッション頭で処理してから、笑っているような感じがする。笑うことを期待されているから笑っているような、そんな靴の上から足を掻くようなもどかしさがある。
ギャップに意外性を感じないせいかな?作っている本人もおかしくないのに「理屈から言えばこれでおかしいはずだ」と、頭で作ってしまっている感じというか。「どうだ、おかしいだろ。笑え」と強制されているような。
例えが良くなかったか。
ここはもどかしさを感じつつも、オープニングとしては十分に期待を感じさせるシーンだった。


うーん、いや、俺が期待しているものが間違ってるのかな。
決してつまらないわけじゃない。そうだな。お互いに、お互いが敵らしいと知って、探り合いながらの夕食のシーン。そこから始まる撃ち合い。あのあたりから、2人が殺したくないという葛藤を抱えたまま対立している間は、かなり笑える。
俺にとって、あくまで俺にとってでしかないと思うけど、和解した後から先はない方が良かったかもしれない。ストーリー的にまとまりがなくなろうが、もし、和解したところで映画が終わっていたら、かなりいい印象を持って終わったと思う。和解して、逃亡生活が始まって、お互いが今までについてきた嘘を言い合いながら終わり。


そうだ。この映画の特徴はなんだ?殺し屋同士の仮面夫婦というところだ。けど、和解後はその特徴が消え、2人組対組織のアクション映画になってしまっている。そうか、そこまでのアクションシーンは、個人の対立としてどこか不自然に大げさな、冗談の香りが漂っていた。それが和解後、敵が組織になって、冗談の香りが消えてしまったのかもしれない。
最後のアクションも、まあ、不自然といえば不自然だけど、それまであったような冗談の香りはもう感じなかった。