Hide's Mail 10月10日

中田英寿のページのHide's Mail10月10日版に、ラトビア戦直後のインタビューについて書かれていた。
俺は中田のファンだけど、日本代表戦はあんまり熱心に見てないので、残念ながらこのインタビューは見逃した。


中田が書いている内容だけど……
http://nakata.net/jp/hidesmail/hml254.htm
俺が雑誌「yeah!」について書いた事と同じような事書いてる!
「yeah!」という雑誌に載っている中田の入団会見の記事 - 実感近似

ウレシー!かなり似てるよ。こんな事もあるんだな。
そうなんだよ、さすが中田、分かってるな。


基本的にサッカー以外のスポーツは見ないので(サッカーにしてもニワカの域を出ない)、サッカーのインタビューしか知らないけど、「…でしたが」で終わる質問をよく聞く。酷いのになると「…でした」でマイクを向ける。で?って感じだよな。そういうのを見る度にいつもむずむずするものを感じていた。今回槍玉にあがってしまったインタビュアーは運がなかった。なにしろそんな質問っぽい「状況報告」インタビューをする人は、たぶんその人だけじゃなくて山ほどいる。


もしかしたら、そういう似非質問をする側としては答えの間口を広くして答えやすいようにしているつもりなのかもしれない。試合直後だし、時間もないし、あんまり込み入った事は聞きづらいというのもあるかもしれない。でも、視聴者にしてみればやっぱりもっと具体的に聞きたい事があるのだ。そういう具体的な聞きたい事、場合によっては選手が面倒で口を閉ざしたいと考えている時でさえも答えを聞き出してこそ、TVの前に出てインタビューをする意味があるんじゃないのか?


……うーん、いや、やっぱ、違うかなって気もしてきた。雑誌のインタビューだったらそうかもしれないけど、試合直後のインタビューだからな。テキトーなコメントが聞ければそれでいいのかもしれない。疲れているところで冷静な分析も語れないだろう。


……うーん、いや、やっぱまた違う気がしてきた。選手は90分間考え続けてたはずだ。どうやって相手を止めるか。どうやって相手を崩すか。マイクを向けられた瞬間に初めて考える訳じゃない。そうすると、選手に答える気力があるかどうかは別だけど、自分なりの考えはすでに持っているはずだ。やっぱりインタビュアーは、そういうものを掘り起こしてこそのインタビュアーじゃないか?


これが中田が書いたように日本語の問題なのかは分からないが、日本人の気質とは関係があるかもしれない。それとアナウンサーの職業の気質。


映画とかニュースとかで見る外国人に比べて、日本人はあまりストレートな質問はしないような気がする(外人の知り合いがいないので実際には知らない)。それはたぶん、一般論として、質問というのがかなり自己主張であるからでもあるし、場合によっては相手を非難する事になるからでもある気がする。例えば「その映画のどこがいいの?」と聞く時、イントネーションや表情や語調に気を付けないと「どこがいいの?(私はつまらなかったのに)」という反語的なニュアンスが出てしまう。
過度な自己主張を良しとしない日本的感覚では、なるべくニュートラルに、自己主張がない形で質問しようという意識が働いているんじゃないだろうか。
それはアナウンサーという職業にも当てはまる気がする。夜10時頃のニュースに出てるような人たちはそうでもないかもしれないが、報道の人たちはなるべく中立な立場でいようとしていると思う。中立である事と自己主張を持たない事とは違うが、重なる部分があるのも確かだ。


このへんが悪いように作用すると、サッカーのインタビューのような「質問ではないように見せかけた質問」が出てしまうのかもしれない。
“今日の試合は2-2でしたが…”
見事に中立で客観的で自己主張がない。この後に続く可能性がある質問を中田が例にあげている。
“…この結果に対してはどう思いますか?”
これは「俺はこの結果に満足してねえぞ」という自己主張に受け取られかねない。実際にはそんなことないだろうが、理屈としては。
“…どうすれば勝てたと思いますか?”
これは勝てなかった事を不満に思っていると受け取られるかもしれない。
“…どうやったら失点を0に抑えられたと思いますか?”
これは、失点した事を不満に思っていると受け取られるかもしれない。

こうやって書くと馬鹿らしく思えるかもしれない。でも、中立性を求めるうちに、無意識のうちに判断するようになっていると、馬鹿らしさにも気づかないかもしれない。


俺は普段、中立に物事を眺めようと無意識のうちに指向している(どこまでそれが成功しているかはまた別だ)。
だから、そういう気持ちも分からないでもない。そういう気持ちを汲んだ上で答えるのが大人だ、という考え方も分からないでもない。実生活ではそういう気遣いは必要だ。


インタビュアーを非難するつもりが、いつの間にか擁護する側になってるな。


いや、インタビュアーを擁護する気はない。一般人だったら仕方ないのかなという気にはなってきたが、インタビュアーも同じじゃインタビューをする意味もない。
質問にはインタビュアーの意志と意図が必要だ。自分の視線が必要だ。質問する事は自己主張だと認識して、自分の中の自己主張を抑える気持ちを取っ払って、自分が何を聞きたいか、どんな切り口で選手の内面を引き出すかを考えて欲しい。