「みんなのうた+α」 ミドリカワ書房

この人の曲はまず詩が面白くて惹きつけられたけど、繰り返し聴いてると、当たり前かもしれないけどメロディが結構良かったんだな。


面白いドラマを扱った詩が多いので、なんかキワモノのような気がしてしまうけど、曲自体が結構いいな。
曲と曲の間に入っている「導入部ショートドラマ」がまたキワモノっぽさを強めてる。それがない方が良かったかも。いや、これはこれで面白いか。


「顔2005」という曲は、顔が嫌いでママみたいに綺麗になりたいから整形手術をすると決心して、ママに打ち明けるという内容だ。


そんなに悲しい顔しないで
ママって泣き顔も綺麗だよね


せつねー!この娘の立場でも、母親の立場でもせつない!
この娘も深刻な相談をしながらも気づいてしまったんだろうなあ。「あ、綺麗」。母親もきっと不意を突かれたろうな。そしてまた、どうしようもなさ、解決法のない出口のない状況にいっそう泣くんだろうなあ。「そんなことないよ」という言葉の嘘くささにそういう慰めの言葉も出ずに、認めてしまうわけにもいかず。次の言葉を見つける事ができない。


どの詩にもドラマがある。
人の行動と台詞は、その人の思いを直接表すわけじゃない。むしろ隠してしまうか婉曲に表現する。そもそも、本人が自分の気持ちに気づいていない事もある。口にしない部分にこそ、思いが存在する。
ただ、完全に隠しきる事はできない。隠さなくてもいい事を隠したり、言わなくてもいい事を言ったり、そういう不自然さが逆に心を雄弁に物語る。
それが状況を複雑にしてドラマと面白さを生む。他人事なら、という但し書きが付くけど。

でもだからこそ、逆にたまにサンボマスターみたいな直球が来るとまともに喰らって、面白さにやられてしまうんだな。


日本には「本音と建て前」があるという。ならば、現実世界では、世界より日本の方が面白いドラマが生まれてるのかもしれないなあ。