「バガボンド」 井上雄彦 著

うーん、面白い。一気に読んだ。どこから書こう。
現代的な軽さを入れつつ、時代劇の格好良さが表現されている。しかもただのアクションの格好良さだけではなくて、生き方の格好良さがある。これはなんだろう。覚悟?自信?単純に強いものへの憧れかも。
全く単純な話だけど、強いやつ、才能があるやつっていうのは格好いい。騒がしい雑魚を軽く蹴散らす姿は憧れる。言ってみれば、これはその頂点にいる者達同士の対決だ。そういう立ち位置に惹かれるのかな。

剣道、柔道、弓道、書道、華道。技術を極めようとすると道になる。そういう哲学的な雰囲気もこの本は持っている。技術の道を究めることで、己を磨く。
漫画とか小説だとなんか想像つくけど、現実的に実写で想像すると理解できないな。技術を極めて、そこに哲学が生まれるのか?現在のスポーツ界の達人とか芸術家とかを具体的に思い浮かべて、そういう人たちから哲学的世界認識が生まれるのは想像しにくい。このギャップはなんだ?
現代と昔の違い?
というか、技術を極めるところから、なんで存在とか世界(全ての地球上の国という意味ではなくて、存在する場としての世界)に思いを馳せることになるんだ?
意識の違いか?集中力?集中した時に違う世界が見えるのか?ハイ状態?自分の意識の存在は意識するかも?
そうか、そもそもどんな哲学が生まれたかを知らないんだ。「五輪の書」とか「風姿花伝」とか読んでみようかな。技術の行き着く先に生まれる道って何だ?

主人公のキャラクターの魅力。男の色気。不思議なことに少なくても男の色気は、死を覚悟している人たちに現れるような気がする。死が大げさとすると破滅と言ってもいいかもしれない。そして、自分の感情に素直であること。それを維持できるだけの、人に対する精神的な強さを持っていること。

この本で一つ、悪い意味で漫画っぽいなあと思ったのは、いいライバルと戦う時の高揚感が単調なこと。必ず「わくわくする」。そういう点が「ドラゴンボール」と変わらない。それとも、俺はそこに作り物臭さを見たけど、頂点にいる人たちにはそれこそが本当の感情なのか。