「殯の森」 監督 河瀬直美

・俺の趣味には合わないんじゃないかと思って正直そんなに期待してなかった。だけど、その予想はまったくはずれていた。
・娯楽として面白い映画とかかっこいい映画とかにはそこそこの確率で当たるけど、こんな風に心情的な部分が身に迫る映画は久しぶりに見たような気がする。
・始めのうちは老人を扱った社会性の強い映画だと思っていた。なので、いくら綺麗な映像が出てきても、ちょっと距離を置いて眺めるような、ちょっと実感として掴みきれない感じだった。
・だけど途中から様子が変わってくる。社会的な面より個人の内面に迫っていく。徐々に神話的、寓話的な色も強くなっていく。老人を扱った映画ではなくて、生死を扱った映画だった。
・もう一つ俺の急所を突いたのは、たぶん、男を守る女という関係だ。男は女に母性を求めているというような話を良く聞くけど、これを見ていて確かにそれはあるかもなあと思った。弱者になって女に面倒を見てもらいたいという欲求はあるなあ。今まであまり考えたことなかったけど。
・これを見た男みんながそんな風に感じるとも思わないけど、なんだか女を求める気持ちを掘り起こす映画だ。それは体が欲しいという気持ちとはまた違う。
・もっとも、違うと言っても入り口が違うだけで結局出口は一緒だけど。