「アポカリプト」 監督 メル・ギブソン

アポカリプト オリジナル・サウンドトラック
・うーん、面白いと言えば面白いのだけど、期待した方向が違っていたのであまり乗り切れなかった。
メル・ギブソンの前監督作は挑発的にキリストを描いたものだったみたいだ。観逃したけど。そして、その次の映画の題名が「アポカリプト」となれば、自然と英語のapocalypse、黙示録を連想してしまう。それで、また宗教的に挑発的な映画なのかと思ってしまった。しかもマヤ文明が題材で英語をあえて使っていないと聞けば、何か社会的な挑発も含んで、なにやら小難しい思索的な映画なんじゃないかと思ってしまった。
・だけど、ふたを開けてみたら娯楽アクション映画。変な先入観がなければきっと楽しめただろう。
・生物としての森、生物の運動、そういうものの表現は群を抜いている。
・アクション映画としては重要な点ではないのだけど、思索的なものを期待してしまっていた俺としては観光客的な表現が気になる。
・街の映像などは単純に目新しさだけを映し出そうとしているようで、まるでスターウォーズのようだ。スターウォーズで描かれる街は変な生き物にフォーカスしている。この映画は、ほとんどそれと同じ扱いでマヤ文明の奇抜な装飾にフォーカスしている。観光客の目線だ。
・外国人が日本を撮ると過剰に日本的になったり、過去を舞台に撮ると過剰にその時代を表すものが出てきたり、観光地が過剰にその土地柄を前面に出たりするのと同じだ。特徴的な目新しさを追ってその奥に踏み入らない。
・話はすこしずれるけど、こないだ「のだめカンタービレ」を読んでいたら、少しきつくなった服を安全ピンで留めて着て、演奏中に安全ピンが飛んでしまうというシーンがあった。これが男向けの漫画だったらサービスカット的なニュアンスが出てしまうのだろうけど、やっぱり女性向け漫画なのでそういう雰囲気はなく「ちょっと体重増えちゃった」的なほのぼのニュアンスだった。どういう視線で見ているかは微妙な違いだけどやっぱり伝わってくるなあと思った。
・この映画の観光客的な目線も、微妙な違いではあるけど確実に伝わってくる。
・ただのアクション映画になぜわざわざマヤ文明を選んだのかよく分からない。この映画ではマヤ文明は借りてきた衣装に過ぎない。同じ内容の映画はマヤ文明でなくても成立するだろう。俺は気付かなかったけど、アクション以外の何かをこの映画は表現しているのか?
・外からスペイン人がやってきて征服される直前にも仲間内で争っていた、という部分に本当はもっとフォーカスしたかったのか? 全然伝わってこなかったけど。