「ピアニストを撃て」 監督 フランソワ・トリュフォー

ピアニストを撃て〔フランソワ・トリュフォー監督傑作選5〕 [DVD]
良く喋るのどかな犯罪映画だ。いびつさが面白い。制作時にどんな意図を持って作られたのかは分からないけど、拉致した相手と和気あいあいと車の中で盛り上がったりするところなんかは、シュールなコメディのようだ。
無駄口を叩き脇道にそれる犯罪映画は今では多い。クエンティン・タランティーノの映画とかエルモア・レナードの小説を映画化したものとか。いや「今では」と言っていいのか「今でも」と言った方がいいのか、タランティーノ以前の状況をよく知らないのでなんとも言えないけど、とにかく「ピアニストを撃て」はそれらと近い印象を受ける。それらをもっと脱臼させた感じ。


ただ、もしかしたら結果的にそう見えるだけなのかもしれない。
コメディ映画、恋愛映画、犯罪映画を切り貼りして作ったようなこの映画のテンポのいびつさは面白いけど、そう感じるのは俺の感覚がハリウッド映画に慣らされているためなのか、あるいは当時から不自然な物だったのかは分からない。たぶんネットでちょっと調べればその辺の事は出てくるのだろうとは思うけど、それらを知識として仕入れたところで、今俺が当時の感じ方でこの映画を観る事は不可能だろうからあまり意味はないだろう。
と、割り切りたいような、割り切りたくないような。まあ、どっちにしろ、今の感覚で観る事しかできないのだけど。