「ルナシー」 監督 ヤン・シュヴァンクマイエル

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冒頭で監督本人が登場し少し講釈を垂れながら「これはホラーです」とかなんとか言うので、ホラー映画が苦手な俺としてはちょっと身構えてしまうのだけど、ある意味予想通り、殺人鬼が出てきて若い男女が惨殺されるわけでもなく、幽霊が人を脅かしながら呪い殺すわけでもないのでほっとする。
もっとわけの分からないイメージの連続かと思ったけど、意外とストーリーがある。わざわざ監督自身が登場してサド公爵がどうとか監獄がどうとか芸術がどうとか言うくらいだから、このストーリーにも何らかのメッセージを込めているのだと思うのだけど、あまり感じるところはなかった。


それよりなんと言っても、肉、なのだ。


生肉片が地べたを自立的にもぞもぞと這い回る。随所に挿入されるこのイメージが鮮烈に感触的だ。汁気のある食べ物を地面に落として土が付いてしまった感じ。なんだかものすごく汚い事、いけない事、取り返しのつかない事をしてしまった感触。もう、ストーリーとは関係なく、この生気を感じさせる映像の汁気がたまらない魅力だ。