「神曲」 - 神聖で下世話な喜劇

神曲

神曲

ほとんどギュスターヴ・ドレの挿絵がメインのダイジェスト版みたいな本だ。オリジナルを読んでないのでどの位省かれているのかは分からない。とりあえずこの本は普通の散文で読みやすい。
ちなみに、漫画「アカギ」の表紙カバーの見返しの部分には、このドレの挿絵が使われている。


神曲」は原題が「La Divina Commedia」、英語で「Divine Comedy」、直訳すると「神聖な喜劇」。たぶん、日本語の「コメディ」とはニュアンスが違うんだろうけど、考えてみると、日本語の「コメディ」と通じるものがあるような気がしてくる。


この叙事詩でダンテは、実在した人物達を地獄に落としたり煉獄に縛り付けたり天国に住まわせたりしている。それは高邁な理想や卓越した思想を拠り所にしているのかもしれないが、やっている事は自分の思想を基準にした分類だ。自分の敵は地獄、自分の愛した女は天国。もし今同じ事をやったとすると、かなり下世話な本になりそうな気がする。宗教がもっと思想の根本にあった当時としては、下世話という軽さはないのかもしれないが、もし現代でやってみたとすると、できあがった本は「ブラック・コメディ」に分類されるんじゃないだろうか。
うーん、下世話と感じるその感覚は、俺がのほほんと過ごしているからなのか? 日本であっても、もし才能と度胸のある人が現代版「神曲」を書き、天皇やらヤクザやら政治やら宗教やら俺の知らない社会まで本気で対象としたら、「ブラック・コメディ」では済まないのかもしれない。