いまさらだけど、"web2.0" の".0"ってなに

ここ数年、雰囲気に流されてるんじゃないかなあと感じる事が増えてきている。昨年の自民党が圧勝した選挙にしても、ライブドアの事件にしても。そして、最近の"web2.0"という言葉の流行り方にしても。
俺が読んだ限りでは、"web2.0"に明確な定義はないらしい。定義がないのに"2.0"。"2"ではなく"2.0"。まあ、ただの名前だと言えば名前なんだけど、逆に言えば、数字には意味はないわけだ。"web3.0"でも"次世代web"でも"web#"でも"xfc"でもなんでもよかったわけだ。それをあえて、無意味に".0"をつけた"web2.0"にしたわけだ。この".0"に、普通のソフトウェアで使われているマイナーバージョンアップの意味はない。"web2.0"という言葉は、ソフトウェアのバージョンアップのイメージを借りた、ただの名詞に過ぎない。この".0"と付けたところに、なんだか、まるで実体があるかようにあえて誤解させようとする、いやらしいビジネスの臭いがする。


強調しておくけど、別に"web2.0"が指しているものが良くないと言っているわけじゃない。あくまでも、気に入らないのはその名前と、そのネーミングに喜んで飛びついて、当然のように使っている今の雰囲気だ。
よく知らない俺が言うのもなんだけど、ユーザ、経営、技術の視点がごちゃごちゃに語られているところが多いし(そもそも定義がないから仕方ない?)、なんか浮かれてる感じがしてならない。もちろん、それはそれだけいろいろ可能性があるという事の現れなのかもしれない。


元々"web2.0"という名前は、海外で生まれた言葉らしい。海外でもこの言葉は流行ってるのか?
ティム・オライリーの「web2.0とは何か」の中に、

それからわずか1年半の間に、「Web 2.0」という言葉はすっかり根を下ろした。この言葉をGoogleで検索すると、950万件以上のヒットがある。

とある。うーん、やっぱり海外でも流行ってるのか。

Web 2.0:次世代ソフトウェアのデザインパターンとビジネスモデル(前編) - CNET Japan
What Is Web 2.0 - O'Reilly Media


じゃあ、検索してみよう。www.google.comで検索した結果とwww.google.co.jpで検索して見つかったページ数を比較してみる。参考に他の言葉も検索してみる。
カンマでつなげた言葉が書いてある行は、それぞれの言葉の検索結果数の合計を書いてある。www.google.co.jpでは「日本語のページを検索」を選択する。検索結果数の単位は千件。かっこ内は.comの検索結果数と比較した時の.co.jpの検索結果数の比率。
比率の小さい順に並べる。

検索語 www.google.co.jp 検索結果数(千件) www.google.com 検索結果数(千件) comと比較した時の
co.jpの比率(%)
firefox,ファイヤー・フォックス 1,939 129,000 2
napster 167 10,700 2
SQL 1,790 112,000 2
Microsoft,マイクロソフト 12,900 742,000 2
google,グーグル 15,360 852,000 2
java 5,960 329,000 2
RSS 22,200 1,170,000 2
XML 12,300 621,000 2
netscape,ネットスケープ 3,846 194,000 2
BitTorrent 221 10,900 2
Javascript 9,460 326,000 3
Flickr 1,410 48,100 3
permalink 2,720 77,500 4
"del.icio.us" 1,140 32,100 4
C++ 2,660 70,600 4
ajax 2,110 44,600 5
P2P 1,540 29,200 5
Wikipedia,ウィキペディア 15,140 211,000 7
blog,ブログ 39,900 555,000 7
CGI 22,800 317,000 7
"long tail",ロングテール 368 3,380 11
web2.0 1,980 4,190 47
winny 4,020 1,880 214


www.google.comとwww.google.co.jpの違いもよく分からないでやってるし、その言葉が別の意味で使われているページも含まれたままなので、当然、厳密なデータじゃない(ajaxという文字を見て、俺が最初に連想するのはオランダのサッカーチームだ)。だけど、単純に見て、"web2.0"の日本語率は圧倒的に多い。この調べ方の不正確性を考慮しても異常に多いと言っていい気がする。他の言葉は大体一桁だ。
ここからいろいろ考える事はできる。日本人が先端を感じ取ることが早かったという事かもしれない。だけど、俺はどうしても否定的に捕らえたくなる。中身を伴わずに、言葉だけが一人歩きしているような気がして仕方ない。それだけ、"web2.0"という言葉が日本人の心を掴むキャッチーな言葉だったんじゃないのか。


「マイクロサーフス」という小説がある。マイクロソフトを退職してベンチャー企業を立ち上げる男が主人公の青春小説だ(ったと思う)。amazonによると1996年の作品だ。今手元にないので、またうろ覚えだけど、その中で「僕たちは1.0に憧れる」というセリフがあったような気がする。
それに対して、日本人が過剰反応するのは2.0。うーん、ありがちな日本人像にはまり過ぎてて面白味がない。


もう一度書いて強調しておくけど、別に"web2.0"が指している技術やサービスが良くないと言っているわけじゃない。あくまでも、気に入らないのはその名前と、そのネーミングに喜んで飛びついて、当然のようにその言葉を使っている今の雰囲気だ。


とここまで書いて気がついた。ティム・オライリーが書いたweb2.0についての文章はよく見ると"web2.0"ではなく、"web 2.0"となっていて、webと2.0の間にスペースが入っている。
もう一回スペースを入れて検索してみる。

検索語 www.google.co.jp 検索結果数(千件) www.google.com 検索結果数(千件) comと比較した時の
co.jpの比率(%)
"web 2.0","web2.0" 3,000 29,990 10



うわあ、なんだよ。他の言葉とあんまり変わんなくなっちゃったよ。多いといえば多いけど、微妙な感じ。これじゃ、はっきりした事は言えないか。あー、なんか無駄な事に時間を使ってしまった気分だ。引用したオライリーの文の中にも「950万件以上」って書いてあるじゃん。気付くのが遅かった。
でも、日本語率を調べるのは少し面白い作業だったからいいか。うまいことやると、外国と日本の温度差を数値化できるのかもしれない。


せっかく調べたのでアップしておく。

マイクロサーフス

マイクロサーフス