「ラストキング・オブ・スコットランド」 監督 ケヴィン・マクドナルド

Last King of Scotland
面白い。俺の場合、だいたい「すごい面白い」と思う映画は何かしら強烈な違和感のようなものが源になっている場合が多い。それは視覚的な印象だったりドラマ的な印象だったり側面は様々だけど、なにかしら刺激を受けて面白いと感じる。だけど、この映画ではあまりそういう強烈さというのはあまり感じなかった。それなのに「すごい面白い」。なんだろう。ふらふらとした危うさ、かな。そういう感じの緊張感で引き込まれた。
主人公の性格的な軽さに歩調を合わせるようにして、この映画はブラックコメディなのかと思うような快適なテンポで進んでいく。しかし、妙に自分だけ盛り上がってしまった時にふと気付くと周りの人達が引いていて気まずさを感じるように、時折、主人公と周囲の人物との温度差に冷たい不安が流れる。この映画の表面上の快適さには常にそんな違和感がまとわりつく。あ、やっぱり違和感か。この微妙に場違いな感じがなんとも危ういバランスを保っている。そして表面上の軽さに引きずられ、気付かずにいつの間にか主人公は一線を越える。
最後だけちょっと不満かな。一線を越えたらそのままどうにもならないまま終わってほしかった。


ファイト・クラブ [DVD]
アミンの台詞「死がお前が初めて感じるリアルだ」。おお、「カイジ」の世界じゃないか。時代背景は全然違うけど、俺がこの映画から連想したのは「ファイト・クラブ」だった。生の実感を欠き、映画やゲームと現実の虐殺や紛争と区別がつかない人間の話だ。もちろん俺もそこに含まれる。全部テレビ画面とかスクリーンの中でしか見たことないし。きっと俺が実際の虐殺現場を知っていたら、あるいは現実のものとして実感できていたなら、この映画を見て「面白い」とか言ってないだろう。